エイコンドライト(Achondrite)とは?
エイコンドライトは、隕石の中でも「コンドリュール」を持たない特別なタイプで、惑星や小惑星の内部での火山活動や変成作用によって生成された隕石だ。太陽系初期の成分を多く残した「コンドライト」とは異なり、より進化した岩石の構造を持つ。このため、惑星や小惑星の表面や内部での活動を知るための手がかりとなっている。
また、エイコンドライトには「原始的エイコンドライト」と呼ばれる分類がある。これらは、部分的な溶融を経験しており、コンドリュールは持たないものの、完全には融解していないために元の組成が残っている。主に火星や月、小惑星とは異なるタイプの微惑星で形成されたものと考えられている。
月隕石
月隕石は、月の地殻や表面から飛来したエイコンドライトであり、月の火山活動や衝突イベントによって飛び散った岩石が地球まで届いたものだ。これらは、主に「長石質角礫岩(Feldspathic breccia)」やバサルトなどの火成岩から構成され、月の成分と同じ鉱物組成を持つ。
月隕石は地球での発見例が少なく、コレクターや研究者にとって非常に貴重だ。月の成分そのものを体験できるため、収集や研究の対象として特別な価値がある。
詳細は「月隕石とは?」にて。
火星隕石
火星隕石もまた、エイコンドライトに分類される。火星の地殻やマントルの一部が火山活動や隕石の衝突によって吹き飛ばされ、長い年月をかけて地球に到達したものだ。特に、火星特有の「シャーゴッタイト(Shergottite)」や「ナクライト(Nakhlite)」と呼ばれるタイプの岩石が代表的で、これらは火星隕石の特徴的な組成とされている。
火星隕石は、火星由来のガス組成を持つため、他の隕石と区別される。地球上では非常に珍しいため、収集すること自体が名誉とされている。
HED隕石
HED隕石とは、「ホワルダイト」「ユークライト」「ダイオジェナイト」という3つのタイプを含むエイコンドライトのグループだ。これらは主に、ベスタと呼ばれる小惑星で形成されたとされている。
- ホワルダイト(Howardite):ベスタの表面に堆積した岩石で、他の隕石や小惑星の破片が混ざり合って形成されたものだ。
- ユークライト(Eucrite):ベスタの火山活動で生成された火成岩で、主にバサルトから成り立つ。
- ダイオジェナイト(Diogenite):ベスタの内部から湧き出た火山岩で、粗粒な岩石構造が特徴とされる。
ベスタ起源という特異性があるため、HED隕石は隕石収集家や研究者にとって興味深い対象となっている。
[参考] HED隕石とは?
エイコンドライトの魅力と価値
エイコンドライトは、地球上にはない鉱物構造や成分を含んでおり、惑星や小惑星の進化を物語る「宇宙からのサンプル」として評価が高い。月隕石や火星隕石、HED隕石などがその代表であり、特に各天体の成分を直接観察できるため、学術的にも収集価値がある。