隕石とテクタイトについて
地球に降り注ぐ宇宙の贈り物である「隕石」、そして隕石の衝突によって地球上で形成された神秘のガラス「テクタイト」。
一見似ているようで、その本質は異なり、コレクターや隕石愛好家にとって知っておきたい魅力的な違いがある。
この記事では、隕石とテクタイトの起源、特徴、そして見分け方を解説する。
隕石とは?
隕石は宇宙から地球に到達する自然の岩石で、主に小惑星や彗星の一部が地球の重力に引き寄せられて降り注ぐことで生まれる。
隕石には主に、以下のような種類が存在する:
- コンドライト:最も原始的な隕石の一つで、宇宙の始まりから変わらない成分を含むため、宇宙の歴史を研究する上で貴重な存在。
- エイコンドライト:コンドライトに比べ、母天体上で変成を受けた隕石。火山活動などで溶けた岩石が冷えて固まったものが多く、火星や月由来の隕石も含まれる。
- 鉄隕石:鉄とニッケルが主体の金属成分からなる隕石で、特有のウィドマンシュテッテン構造が見られる。重く、磁石に強く反応するのが特徴。

隕石は、その表面に見られるフュージョンクラスト(大気圏突入時に表面が溶けて冷却した層)や、重厚感、特殊な鉱物成分によって、地球上の岩石とは異なる独自の魅力を持つ。ただし、加工等によりフュージョンクラストがない隕石も流通している。
テクタイトとは?
テクタイトは、隕石の衝突によって地球上の地表が高温に晒され、溶けた地表の成分が冷却されてできた天然ガラスの一種。
テクタイトには以下のような代表的な種類がある:
- モルダバイト(Moldavite):チェコのモルダウ川流域で採れる緑色の美しいテクタイト。ジュエリーとしても人気が高い。
- リビアングラス(Libyan Desert Glass):サハラ砂漠で採れる黄色や金色のテクタイト。こちらも人気が高い。
- インドシナイト / インドチャイナイト(Indochinite):インドシナ半島一帯で発見される黒いテクタイトで、独特の形状と光沢が特徴。同様のものは中国やオーストラリアでも見つかる。

テクタイトは隕石とは異なり、基本的にガラス質であるため磁石には反応しない。また、形成過程で地球の成分が一緒に溶けているため、化学成分や質感も隕石とは異なる。
隕石とテクタイトの違い
隕石とテクタイトは、見た目や生成過程が異なり、それぞれの特徴も明確に違う。ここでは、隕石とテクタイトの主な違いを紹介する。
起源の違い
- 隕石は地球外からやってきた岩石で、母天体(小惑星や彗星など)から分離され、宇宙空間を旅して地球に到達する。
- テクタイトは隕石が地球に衝突した際の高温・高圧環境で、地表の岩石や砂が溶け、急速に冷却されてできた天然ガラスで、地球由来の成分が多く含まれている。
成分と構造の違い
- 隕石には鉄やニッケルといった金属が多く含まれており、特に鉄隕石やパラサイト(鉄とシリカ鉱物の混合)には特有のウィドマンシュテッテン構造が見られる。
- テクタイトは地球の地表成分が溶けて冷えたもので、主にガラス質から成り、内部に気泡や条痕が見られることもある。
見た目と質感の違い
- 隕石は、黒っぽいフュージョンクラストと呼ばれる層を持ち、冷却の過程で形成された滑らかな表面や、内部の独特な鉱物構造が見られる。
- テクタイトはガラス質で、滑らかな表面や独特な形状(丸みを帯びたものから不規則な形まで)を持つ。色も緑や黒が多く、光に透かすと透明感があるものも多い。
磁性の違い
- 多くの隕石は、鉄成分を含んでいるため、磁石に反応するものが多い。特に鉄隕石や金属粒を含むコンドライトは磁性が強い。ただし、エイコンドライトなどは反応しないものもある。
- 一方でテクタイトは、地球由来のガラス質成分から成るため磁石には反応しない。この磁性の有無は、隕石とテクタイトを見分ける重要なポイントとなる。
隕石とテクタイトの見分け方
隕石とテクタイトは見た目や成分の違いからも見分けられるが、初心者が簡単に判別するためのコツを紹介する。
磁石を使った判別方法
- 隕石は磁石に反応することが多い:隕石には鉄やニッケル成分が含まれるため、小型のネオジム磁石を近づけてみると、ほとんどの隕石が磁石に反応する。ただし、磁石に反応しない隕石もある。
- テクタイトはガラス質で磁性を持たないため、磁石に反応しない。磁性があるかどうかを確認することで、隕石とテクタイトの区別がしやすくなる。
重量感の違い
- 隕石は重い:同じサイズでも、隕石は金属を多く含むため重量感がある。手に取るとズシリと重い感覚があるため、地球上の一般的な岩石とは違いを感じやすい。
- テクタイトは軽い:テクタイトは主にガラス質で構成されており、隕石に比べて軽めの重量感が特徴的。
表面の特徴を観察
- 隕石の表面には、フュージョンクラスト(突入時に溶けた黒っぽい表層)が見られ、内部に細かい鉱物が見えることが多い。ただし加工や研磨されている場合は、表面の特徴が消える場合がある。
- テクタイトは滑らかでガラス質。内部に細かい気泡や条痕が見られることもある。黒いものであっても、強いライトで光が透過することが多い。
まとめ
隕石とテクタイトは、その起源と特徴には大きな違いがある。
隕石は宇宙から飛来した岩石で、鉄やニッケルを含むことが多く、独特の重量感と磁性が特徴的。
一方で、テクタイトは隕石が地球に衝突した際の衝撃で形成される天然ガラスで、主に地球由来の成分で構成されているため磁石に反応しない。
隕石とテクタイトの違いを知ることで、コレクターとしての理解が深まり、鑑定の際に役立つ知識となる。
見た目や質感、成分、磁性などの違いを通じて、隕石とテクタイトの世界にさらに興味を持つきっかけとなるだろう。
隕石とテクタイトはどちらも美しく、歴史やロマンが詰まっているため、コレクションとしても、学びとしてもその魅力は尽きない。
今後の収集や鑑定にぜひ役立ててほしい。