アングライト(Angrite)は、隕石の中でも特に珍しい種類の一つであり、世界中の隕石コレクターや科学者たちの間で注目されています。
その希少性と驚くべき科学的背景は、一度知ると忘れられない魅力を秘めています。
この記事では、アングライトがどんな隕石なのか、その特徴や価値、そして隠された物語について解説します。
アングライトの基本情報
1. アングライトの分類
- アングライトはエイコンドライトと呼ばれる隕石の一種です。 エイコンドライトとは、地球の火成岩に似た構造を持つ隕石で、元々は母天体の地殻やマグマから生じたものです。
- 隕石全体の中で、アングライトはたった0.01%未満という極めて稀な存在です。
2. 名前の由来
- アングライトの名前は、1869年にブラジルの街「アンゴラ・ドス・レイス(Angra dos Reis)」で落下した隕石に由来します。 これがアングライトとして初めて確認された隕石です。
アングライトの特徴
1. 宇宙最古の火成岩
アングライトは、太陽系誕生直後、約45億6000万年前に形成されたとされています。
これは、地球の最古の岩石よりも古い時代に結晶化した、宇宙最古の火成岩の一つです。
そのため、アングライトを所有することは、宇宙の始まりを手にするようなものと言えます。
2. 特殊な鉱物組成
アングライトには、以下のような独特の鉱物が含まれています:
- Ca-rich Olivine(カルシウムを含むカンラン石)
- Diopside(輝石)とHedenbergite(ヘデンベルジャイト)
- Anorthite(アノーサイト)
これらは地球ではあまり見られない構成で、科学的な価値が非常に高いです。
3. タイプ:急冷型と深成型
- 急冷型(Quenched):表面で急速に冷却されたタイプで、結晶が細かい。
- 深成型(Plutonic):母天体の深部でゆっくり冷却され、大きな結晶を持つ。
この違いが、アングライトが形成された環境を物語ります。
アングライトの母天体と失われた惑星の物語
アングライトは、現在もその母天体が完全には特定されていません。
しかし、以下の可能性が議論されています:
- 破壊された惑星:かつて存在した惑星が、他の天体との衝突によって壊れ、その一部がアングライトとして地球に届いた。
- 小惑星帯の天体:特定の小惑星(例えば289 Nenettaや3819 Robinson)とのスペクトル的な一致が議論されています。
いずれにせよ、**アングライトは失われた天体の「最後の記録」**といえます。
アングライトの希少性と市場価値
1. 隕石全体の中で0.01%未満
- アングライトは、世界中で確認されている隕石の中でも圧倒的に珍しい存在です。
- 現在、アングライトとして分類されている隕石は、世界で54例程度しかありません。
2. コレクターズアイテムとしての価値
- アングライトは、隕石コレクターの間で「究極のレアアイテム」とされています。
- 市場価格は1グラムあたり数万円に達することもあり、特に状態の良いスライスは非常に人気です。
アングライトの魅力を手に取る理由
アングライトを所有することは、以下のような特別な体験をもたらします:
- 宇宙の歴史を感じる:
45億年以上前の太陽系誕生期の物語を、手の中に収めることができます。 - 希少なコレクションアイテム:
他の隕石とは一線を画す希少性で、隕石コレクターとしての満足感を味わえます。 - 未来への投資:
アングライトはその希少性ゆえ、今後さらに市場価値が高まる可能性があります。
まとめ:アングライトは宇宙の贈り物
アングライトは、ただの隕石ではなく、宇宙の始まりを物語る特別な宝石です。
その希少性と魅力は、コレクターだけでなく、科学者や宇宙好きの心を引きつけてやみません。
もしアングライトに出会う機会があれば、それは単なる偶然ではなく、宇宙からの贈り物かもしれません。