HED隕石とは?種類・特徴・価値を徹底解説【隕石コレクター必見】

HED隕石(ホワルダイト、ユークライト、ダイオジェナイト)

HED隕石とは?

HED隕石とは、主に火星と木星の間に位置する小惑星ベスタを母天体とする、エイコンドライト(無球粒隕石)の一種である。

「HED」とは、これを構成する「ホワルダイト(Howardite)」「ユークライト(Eucrite)」「ダイオジェナイト(Diogenite)」の頭文字から来ている。

これらの隕石は、地球上で発見される隕石の中でも特に興味深い存在で、地質学的なプロセスによって形成されたことから、科学的にも大きな価値がある。

小惑星ベスタ
小惑星ベスタ

小惑星ベスタの3Dモデル
(提供:NASA)

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※背景はイメージです。ベスタとの比率や位置は考慮されていません。

小惑星ベスタについては下記もご覧ください。

HED隕石の特徴

HED隕石は、他の隕石とは異なる明確な鉱物組成を持つ。

その大部分は「斜長石」と「輝石(きせき)」から構成されており、地質的に溶岩の冷却過程で形成されたと考えられている。

これにより、HED隕石には地球の火山岩に似た岩石の特徴が見られるのが特徴だ。

特に、ホワルダイトには衝撃によって破砕された破片が含まれており、ユークライトとダイオジェナイトの混合体とも言える複雑な構造をしている。

HED隕石の種類

HED隕石は以下の3つのタイプに分かれる:

  1. ホワルダイト(Howardite)
    他のHED隕石と異なり、衝撃によって破砕された破片が混ざり合っている。 そのため、ベスタの表層から剥がれた破片が含まれていることが多く、母天体の変遷の歴史が反映された隕石である。
  2. ユークライト(Eucrite)
    火山岩のような性質を持ち、ベスタの表層付近で冷却された溶岩が固まって形成された。 見た目は明るい色をしていることが多く、比較的細かな結晶構造を持つ。
  3. ダイオジェナイト(Diogenite)
    ベスタの内部でゆっくりと冷却され、結晶が成長した隕石で、大きな結晶構造を持っている。 色はやや暗く、重い鉱物が多く含まれているため、ベスタの深部を構成するマントルに由来すると考えられている。

HED隕石はエイコンドライト

エイコンドライト(Achondrite)は、母天体での加熱や衝撃変成を経ているため、コンドリュールが見られないのが特徴。

エイコンドライトは、元々の物質が変成を受けて結晶化が進んでいることから、構造が均質で、コンドライト(未変成隕石)のようなコンドリュールは含まれない。

HED隕石(ホワルダイト、ユークライト、ダイオジェナイト)も同じくエイコンドライトに分類され、母天体での溶融と分化によってできている。これらも変成を経ているため、コンドリュールが存在しない。特にHED隕石は小惑星ベスタ由来とされ、ベスタ表面での火成活動により分化と結晶化が進んだ。

エイコンドライトについては下記もご覧ください。

HED隕石の歴史

HED隕石の母天体である小惑星ベスタは、非常に古い時代に火山活動を経験したとされている。

その活動によって、表層付近で冷却された溶岩がユークライトとなり、内部でゆっくり冷却され大きな結晶を持つダイオジェナイトが形成された。

その後、ベスタに衝突が起き、破片が宇宙へ飛び散り、やがてHED隕石として地球へ到達したと考えられている。

HED隕石は、太陽系の初期の歴史を解明する手がかりとして、惑星科学において重要な資料とされている。

HED隕石の科学的意義

HED隕石は、母天体での火山活動や地質変遷の過程を知る上で、科学的に非常に貴重だ。

これらの隕石は、ベスタでの分化と冷却のプロセス、また隕石がどのように形成されるかという理解に貢献している。

さらに、HED隕石は他の隕石と異なり、火成岩の特性を持つため、火山活動を示す証拠として、惑星の地質進化を研究する上でも極めて重要なデータを提供している。

HED隕石の価値

HED隕石は、地球に落下した隕石の中でも希少なため、非常に価値が高い。

特に、ユークライトやダイオジェナイトの標本はコレクターに人気があり、市場で高値がつくことがある。

その地質学的な特性から研究機関でも重要視されることが多く、入手は難しいが、所有することで隕石コレクションのレベルが上がると考えられている。

また、HED隕石は、隕石コレクターや研究者にとって、ベスタという母天体を直接研究する貴重なサンプルであり、科学的価値と市場価値の双方が高いとされる。

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