隕石になぜニッケルが含まれるのか?

ニッケル

隕石の中のミステリー:ニッケルとは?

隕石には多くの場合、ニッケルが含まれています。
この事実は、単なる金属の混ざりではなく、隕石の特別な「出生証明」のようなものです。

そもそもニッケルとは、私たちが身近に使う硬貨や合金に含まれる金属元素の一つ。
しかし、隕石に含まれるニッケルは地球上の金属とは違う、壮大な宇宙の歴史を秘めています。
なぜ隕石にはニッケルが含まれるのか?
その答えを探ることで、隕石の奥深い世界に一歩近づきましょう。


隕石が語る太陽系の物語

私たちが普段目にする隕石は、地球に落下した宇宙のかけら。
その多くは、45億年以上前に形成された微惑星や原始惑星の一部とされています。

これらの天体は、太陽系の誕生とともに、鉄とニッケルが主成分の核を持つようになりました。
そのため、隕石に含まれるニッケルは、古代の宇宙の「化石」のような存在なのです。

例えば、鉄隕石に含まれるニッケルは、母天体の核部分で形成されたもの。
隕石の金属部分に数%以上のニッケルが含まれているのは、これが理由です。


ウィドマンシュテッテン構造とニッケルの美しさ

ニッケルが隕石の中に存在するもう一つの理由は、鉄との相性の良さにあります。
特に鉄隕石では、鉄とニッケルがゆっくりと冷却されることで「ウィドマンシュテッテン構造」と呼ばれる美しい模様が現れます。

ウィドマンシュテッテン構造
ウィドマンシュテッテン構造

この模様は、母天体の核が数百万年から数千万年という、途方もない時間をかけて冷えた結果。
鉄とニッケルの絶妙なバランスが生み出す「宇宙のアート」とも言える存在です。

シンプルな金属塊の中に、こんな壮大な宇宙のドラマが詰まっているのです。


地球の金属との違いは?

「地球の鉄鉱石にもニッケルは含まれているのでは?」と思う方もいるかもしれません。
確かに、地球上の金属にも微量のニッケルが含まれることがあります。
しかし、その含有量は隕石に比べて圧倒的に少なく、隕石特有の特徴を持っているわけではありません。

例えば、地球上の鉄鉱石に含まれるニッケルはせいぜい1%未満。
一方で、鉄隕石のニッケル含有量は5%から最大で20%にも及ぶことがあります。
これが、隕石を地球上の金属と区別する重要なポイントとなります。

また、隕石の鉄には微量のコバルトが含まれていることも多く、この組み合わせが「宇宙産」である証明となります。


ニッケルが教えてくれる隕石の物語

ニッケルは、隕石にとって単なる金属ではありません。
それは、母天体の形成過程や衝突の歴史、さらには太陽系の進化を解き明かす「鍵」なのです。

例えば、以下のような情報を読み取ることができます:

  • 高ニッケル含有量:母天体の核部分で形成された可能性が高い。
  • 低ニッケル含有量:母天体の表面や地殻部分から来た可能性がある。

こうした分析から、隕石がどのような星の一部だったのかがわかるのです。


宇宙の神秘に触れる

隕石に含まれるニッケルは、私たちに壮大な宇宙の物語を届けてくれる存在。
その中に秘められた歴史は、どんな小さな隕石にも広がっています。

隕石を手に取ったとき、その中に眠るニッケルを思い出してください。
それは、太陽系の誕生から続く、悠久の時間の一片なのです。


結論:隕石に含まれるニッケルは、宇宙の進化とその神秘を物語る重要な成分。
その価値を知ることで、隕石の魅力がさらに深まります。

参考:ニッケルが含まれる鉄隕石の例(画像を押すと記事へジャンプします)

ギベオン隕石
ギベオン隕石

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